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世界と日本の食料廃棄と食品ロスの問題を調べてまとめました|恵方巻廃棄問題をみて

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こんにちはKeitaです。今年も恵方巻の季節となり大量のノルマや廃棄が話題となっています。20年くらい前から日本は食品廃棄量が多いと言われていましたし、僕も小学校で学んだのですが、何か対策はなされてきたでしょうか。むしろコンビニエンスストアの店舗数拡大により廃棄量は増えているのではないかとすら想像してしまいます。というわけで、今回は日本の食品廃棄について調べてみました。

 

はじめに

食料問題について資料を読んだり調べたりしていると、

  • 食料廃棄
  • 食品ロス

という2つの言葉が出てきます。食料廃棄は食料向けに生産された食料で消費されず廃棄されたもの。食品ロスは食料廃棄の中で「まだ食べられるもの」を指しています。例えば、食べ残しは食品ロスで、運搬中に腐ってしまい廃棄されたものは食料廃棄となります。また、食品加工工場において機械化による食品加工において食べられる部分が廃棄されることもあります。これも食品ロスとしてカウントされます。以下、資料で使われ方が曖昧なケースもありますが、留意して読んでいただければと思います。

 

世界の食糧事情

世界全体の食料生産量と廃棄量

まずは世界の食糧事情から調べてみました。というか、日本の食糧事情を調べていたら最初から衝撃的な数字が出てきました。

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世界で生産された食料のうち、3分の1は廃棄されているという事実。日本は食糧で溢れていますが、世界には飢餓に苦しむ国や地域が多く残っていることは誰でも知っています。しかし、世界で生産されている食料のうち3分の1が誰の口にも届かず捨てられているというのは全体最適化がまるでなされていない、食料が一部の国や地域に偏って存在していることを示しています。なんとも衝撃的で悲しい数字ですね…。

 

地域別の1人あたり食料ロス

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引用:http://www.jaicaf.or.jp/fao/publication/shoseki_2011_1.pdf

地域別に見た1人あたりの食料ロスをみてみると、欧州・北アメリカ・オセアニア・アジア先進工業地域の先進諸国のロスが多くなっています。しかし、「生産から小売りの段階」での食品ロスを比較すると、南・東南アジア以外は各地域の差が小さくなっています。つまり、地域別の食品ロスの差は消費される段階で生まれるロスの差が大きいということが分かります。

先進諸国の消費段階でのロスが多い理由は単純に所得が高いためです。所得が高いため余分に買ってしまったり、食べ残してしまうことが増えます。日本でも食べ残しなど消費段階の食品ロスは問題となっていますが、先進諸国の中で見ると消費者の食品ロスは少ない方のようです。特に北米の消費段階の食品ロスは1人あたり年間300キロと突出しています。また、アジア先進工業地域においても中国は食べ残しがマナーという文化があり、日本が先進諸国で著しく消費段階で食品ロスを出してしまっているというわけではないようです。

また、「生産から小売りの段階」での食品ロスは地域別の差が小さいですが、先進諸国とその他の地域では内容が大きく異なるそうです。先進諸国では「生産から小売りの段階」において、

  • 農作物や生産物の形状や品質による廃棄
  • 加工工程の自動最適化による食べられる部分の廃棄
  • 店舗での売れ残りの廃棄

など、ビジネス面の理由による廃棄理由が多くなっています。例えば日本で問題になっている恵方巻の廃棄も同じです。このような年に1度のイベントに合わせた商戦ではどうしても通常以上のロスが発生してしまいます。

一方で、先進諸国以外のその他の地域では理由が異なります。

  • 貯蔵施設の設備、整備不足による腐敗が多い
  • 物流の設備、整備不足による腐敗が多い
  • 生鮮市場の衛生状況が良くなく、傷む食料が多い

せっかく食べられるものが消費段階に到達する前に食べられなくなってしまう量が多いようです。これらの問題を解決するためにはインフラの投資が必要ですが、インフラを十分に整えることができるほど豊かになると、先進諸国のビジネス面の理由により「生産から小売りの段階」の食品ロスは横ばいになるというのは何とも頭の痛い話ではありますね。

 

日本の食糧事情

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日本で食用として生産される食料は年間8000万トンほどです(平成21年)。そのうちの12%が家庭で、9%が事業所でゴミとして廃棄されています。15%は食用外としての取引にまわり、飼料や工業材料として使われることになります。恵方巻の廃棄でコンビニやスーパーチェーンが批判されていましたが、日本の食料廃棄元は家庭からが最も多いわけです。

 

日本の食品ロス

総量としては家庭からの食料廃棄が多いのですが、もう少し中身を見てみましょう。今度は家庭と事業者別に食料廃棄と食品ロスを調べてみました。

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なんと事業者の食品ロスは家庭からの食品ロスと同量となっています。割合でみると事業者から廃棄されている食料の半分以上がまだ食べることができるものとなっているわけです。

 

日本の食料リサイクル

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上図は日本で廃棄された食料の利用状況です。約2割が飼料や肥料として再利用されているようです。が、大半は焼却処分、または直接埋め立てられているようです。食料として生産されたのに2割は事業者または家庭からゴミとして廃棄され、さらにその8割は焼却、埋め立てされていることとなります。つまりは日本で食用として生産された食料の16%は焼却か埋立処分されているわけです。

 

問題の解決にむけて

先進国ではビジネス的な理由で食品ロスが生まれている現状があります。これは生産効率化や販売効率化、サプライチェーン効率化によって廃棄コストが安価になっている実情が現れているものと言えます。つまり食品ロスを抑えることはコストになるわけです。食べられるとしても、ある程度は捨てた方が安い。恵方巻の大量廃棄問題においても、年に1度のイベントで高利益率の商品が品切れになって機会損失となるより、ある程度の過剰在庫を抱え、売れ残りを捨てたほうが総利益は大きくなるというわけです。このため、国や自治体でとることができる対策としては「食料廃棄や食品ロスのコストを上げる」ことが最も効果的であることが分かります。例えば食品ロスの重量やカロリーに応じて課税すると事業者にとっての経営効率化はどう変わるでしょうか。

  • 加工工場の加工工程の最適化で「食品ロスの低下」の優先順位が上がる
  • 小売店で廃棄コストが上がるため、期限切れが近い食品の売り切りのため策を練る

市場原理で発生する問題は市場原理を利用して解決を促したいものです。フランスでは2015年に大手スーパーマーケットによる売れ残り食品の廃棄を禁止する法律を作りました。大手スーパーマーケットは売れ残った食品を慈善団体に寄付するか家畜の飼料や農家の堆肥に転用する義務を負っています。食料廃棄に法的リスクを設けることで問題の解決を図った1つの例です。

 

食料転用の難しさ(余談)

余談となりますが、父の会社がテナントの入居者の飲食店の食料廃棄を預かり、購入した機械で肥料とする事業を数十年前に開始しました。食料転用の良い事例であると地方紙でも紹介され、会社のブランディングや社会貢献事業としても良いものだと当初は注目されていました。しかし、事業は早々に頓挫します。肥料にしても肥料の利用者がいないのです。肥料を販売できればビジネスとして最高ですが、黒字にしようとすると、市場に出回って利用されている肥料に価格面で対抗できません。さらに、そもそも飲食店の生ごみで作られた肥料を積極的に使う農家がいませんでした。肥料というのは農家にとって非常に重要なものなので、そんな使用実績もない肥料など誰も使わなかったそうです。結果、ゴミから製造した肥料は再びゴミとなりました。生ごみがお金をかけて肥料ゴミになっただけでした。この手の問題で「肥料にしろ」と安易に言うひとがいますが、肥料にした先を考えなければ問題は解決しないわけです。

 

というわけで、世界と日本の食料廃棄および食品ロス問題でした。

 

参考文献

http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/121005kaigi2_1.pdf

http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/gaimubu/output/pdf/kensyushigen/1501-09-shigen-j.pdf

http://www.jaicaf.or.jp/fao/publication/shoseki_2011_1.pdf

仏、大手スーパーに食品廃棄を禁止 寄付か転用義務付ける 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News