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米国の鉄鋼関税から世界の粗鋼生産量と推移を調べてみました|中国の供給過剰と日本の立ち位置について

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アメリカのトランプ大統領が主に中国に対する鉄鋼に関税を課す貿易制裁を実施すると表明して世界に衝撃が走っています。今回は鉄鋼(粗鋼)の生産について世界情勢を調べてみました。

世界トップの鉄鋼企業

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世界トップの鉄鋼生産量を誇るのはルクセンブルクのアルセロール・ミッタルです。2006年にオランダとルクセンブルクの鉄鋼企業の大合併で誕生した世界最大の鉄鋼企業で、その生産量は1億トンに迫る勢いです。2位の中国の中国宝武鋼鉄集団とは大きく差をつけています。トップ10に君臨している日本勢としては4位の新日鉄住金と8位のJFEスチールです。

世界で生産される鉄鋼の量

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鉄は産業の米と呼ばれており、経済が成長すれば鉄の生産は比例して増えます。世界経済は現在も拡大を続けていますから、鉄の生産も拡大を続けています。2009年はリーマンショックで大きく生産を落としていますが、翌年には過去最高を記録しています。しかし直近の4年は横ばいとなっており、生産量の増加ペースが鈍化していることが分かります。

地域別の鉄鋼生産量の推移

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 実は過去10年間の鉄鋼生産量の増加は多くが中国の生産能力拡大が理由です。世界の工場として鉄鋼大国となった中国はリーマンショック後も生産を拡大してきました。他の地域ではリーマンショックで生産の落ち込みがグラフに現れているのに対し、中国はどこがリーマンショックなのか分かりません。

なぜ中国はリーマンショック後も鉄鋼生産が増えているのか

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中国の鉄鋼生産量の推移は中国のGDPの推移のグラフと形状が似ています。中国のGDPも鉄鋼生産量と同様にリーマンショックの落ち込みがありません。これはリーマンショック時に経済対策として莫大な財政出動を行ったためです。財政出動は主に公共事業ですから、道路や橋、建物など大量に建築されるため鉄が必要となります。このため中国では鉄鋼の生産増強が止まらなかったようです。

供給過剰となり投げ売りされる中国の鉄鋼

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リーマンショック後も生産増強を続けた中国の鉄鋼は遂には供給過剰に陥ります。その在庫は国内ではさばききれずに海外で投げ売りされるようになります。実際に鉄鋼価格はここ数年下落傾向でした。アメリカに流れ込んだ中国製の鉄鋼量の具体的数値は分かりませんでしたが、アメリカの鉄鋼企業であるUSスチールはリーマンショック後の2010年に65ドル付近まで回復しましたが、2014年には7ドル付近まで下がっています。株価が約10分の1です。ただし、ここ数年は供給過剰と不正品質問題などから中国政府も鉄鋼企業の規制を強めており、USスチールの株価も2018年現在は40ドル半ばまで回復してきています。

アメリカの貿易制裁と日本への影響

日本の鉄鋼企業の売上はアメリカ偏重とはなっていません。例えば国内トップの新日鉄住金は国内売上が過半数を占めており、半分以下の海外売上の中でもアメリカは突出した割合となっているわけではありません。さらに、日本の鉄鋼企業は高付加価値商品に特化しており、切り替えが簡単にできない製品が多いことも強みとしています。このため、貿易制裁が強いられてもアメリカ企業は使うところは使わざるを得ず、単にアメリカ企業への増税となってしまう可能性もあります。このためアメリカの自動車業界でも懸念の声が出ています。

いずれにせよ貿易制裁が実施されれば経済の混乱は避けられず、短期的に収束するのか大きなショックを生むのかは誰も分からない状態となっています。

参考