今春で4年前に入社した会社を退職することとなりました。新卒で入社した会社です。周りからは「どうして?」「今のまま働けば安定しているのに」という声から「おめでとう」「始まったな」といった激励の声まで様々。今回はなぜ会社を辞めるのかについてまとめてみます。
新卒カードで入社した企業とは
- 東証一部上場
- 日経225
- 従業員数 8000名
今の会社はいわゆる大企業です。世間的な知名度こそ低いものの、知る人ぞ知る、業界内では誰もが知っている企業です。
なぜ入社したのか
とにかく就職活動では、できるだけ大きな企業に入ろうとしました。いわゆる大手病ですが、安定志向やミーハーな人たちが患う一般的な大手病とは思っていません。就職活動をする上で考えていたのは次のことです。
- 自分が成長できる環境
- 吸収する価値に溢れている環境
- 人脈を作ることができる
これらは一流であればあるほど満たされると学生の自分は考えました。一流の企業には優秀な人材が集まり、高い技術力と競争力で学びも多い。そして取引先も多く、多くの人と触れ合うことができる。社会人経験ゼロの学生の偏見と妄想でした。
同じような理由で新卒でベンチャー企業へ就職する人もいますが、僕は候補にもなりませんでした。地方の大学院生だったので、雰囲気が分からないというのもありましたが、新卒がベンチャーで得られる経験に価値を見出せなかったからです。とりあえずガムシャラに働いて実戦で習得するみたいな。それってエンジニアとしては我流になってしまうし、どうなんだろ?というのがあります。あとはどこかの東大生が「新卒でも入社後すぐに仕事が与えられて活躍できます!って言うけど、新卒が活躍できるってその程度の仕事だよね」というのも当時深く納得してしまいました。
会社は大学と同じ
僕にとって会社は大学と同じです。何が学びたくて大学や学部を選ぶのと同じように、何が学びたくて(経験したくて)会社や部署を選ぶのです。こういう考えの人って一定数いると思っていたのですが、想像以上に少数派みたいですね。入社式のときに当時の社長がこう言ってました。
「まずは5年働いてみてください。それで1人前にようやくなれる。そこからです。」
多くの同期はすぐ忘れたみたいですが、僕は未だに覚えています。というのも、
「あー、ということは、この会社は最長で5年か」
って思ったので。そんなこと考えたのは当時僕だけだったんでしょうね。
大したことない大企業
昨年大ヒットしたドラマ「下町ロケット」でも大企業はエリート、高学歴、秀才、ハイスキルなど完璧な存在として描かれています。結局、僕が学生時代に描いていた大企業のイメージもこういった物から形成されていたのかもしれません。しかし、実際はどうでしょうか。
- 社内紛争
- 短絡的な人件費抑制
- 年功序列による機会損失
などによって、多くの社員は疲弊しています。それぞれ細かく書いてみます。
1.社内紛争
大企業は組織が大きすぎるため、部署間の利害争いが絶えません。営業は成績を上げるために製品の早期リリースや不具合修正を強く求めますし、開発は品質の確保や今後の拡張性を見据えた開発工数、納期を求めます。本来は製品を中心に社内が一体となって競合他社を撃破しなければならないのですが、特に開発部署になると、敵は競合他社ではなく他部署になりがちです。ここで保守的になってしまうと革新的な製品は生まれなくなり、企業は少しずつ衰えていきます。各部署が部分最適化を行うため、企業全体を見た全体最適化からは離れてしまいます。
「お客様が第一」、「製品力で社会を変える」など聞こえの良いキャッチコピーや社訓はありますが、現場の社員は社内紛争でそれどころではないというのが現状です。たった4年で僕は疲れてしまいました。社内紛争のためではなく、世のため、人のために製品開発をしたかった。
2.短絡的な人件費抑制
これも部分最適化の罠です。ソフトウェア開発では新興国に開発を委託することがよくあります。新興国のエンジニアの人件費は日本人より安いからです。が、言葉も文化も違う新興国のエンジニアに開発を委託するというのは実は難しい開発手法です。これをオフショア開発というのですが、これは自社内の企業統治がしっかりしている会社でなければ上手くいきません。自社内の社員をマネジメントできないのに、遠く離れた言葉も文化も違うエンジニアをまとめることなど不可能だからです。しかし残念ながらこれを分かっていない会社が日本にはあまりに多すぎる。分かっていないというか、自社の企業統治がダメなことにすら気づいていないのかもしれません。
その結果、新興国から上がってくる成果物の品質はボロボロです。これを「○○人の品質は悪い」など相手のせいにする人が多いですが、残念ながら日本のマネジメントに問題がある場合が多いです。ここでもアイツが悪い、アソコが約束を守らなかった、なんでアッチはこんなことしたんだーと社内紛争に。たった4年で僕は疲れてしまいました。しかも、品質を向上させるために日本人を増やす始末。本末転倒です。だったら全員日本人のほうが早くて安く製品開発できるよ…。
3.年功序列による機会損失
会社に辞めることを伝えたとき、非常に残念に思っていただきました。とても有り難かったです。確かに僕の人事評価はプラス評価でした。これは将来的に管理職候補として与えていたものだとのこと。
- 管理職になれる人材だと期待していた
- 将来は会社のリーダーとして引っ張ってもらいたかった
僕には勿体ないくらいの言葉です。が、後で疑問に思ってきました。じゃあなぜ今その機会が与えられないのでしょうか?僕はもう29歳です。同い年でマザーズや一部上場の社長をやっている人もいます。年齢を理由に「まだ早い」と言われるのは違和感があります。失敗したら誰が責任を取る?それは僕が取ればいいんですよね?
結局評価されていても機会が与えられないなら、機会損失が発生しているわけです。そうなると、機会を探して外に出るしかないですね。「もっと自分の実力を試してみたい」と言って転職する人は同じような考えなんだと思います。
大企業に入って良かったこと
とはいえ、新卒カードで大企業に入るというのは大きなメリットがあると思います。世の中には給与が上がらないノンキャリア職と、給与が上がるキャリア職がありますが、新卒カードは何の実績もスキルもない学生が一気にキャリア職になれる貴重なカードなのです。一度キャリア職の経歴がつくと、キャリア職からキャリア職への転職は比較的容易です。しかし、ノンキャリアからキャリアへの転職は難しい。エンジニアでも具体的にスキルと実績を相手に示さなければなりませんし。
次の会社も新卒で入るには相当なスキルや実績が必要なので、一旦大企業で実績と勉強を積むというのは良い選択だと思います。大企業は新人研修もしっかりしているので、大学やベンチャーでは学べない座学や理論を習得することができます。また、将来的に起業やベンチャー転職を考えているなら、巨大な敵である大企業の思考プロセスや雰囲気を知っているのは大きいかと。もはや僕は名だたる大企業が立ちはだかってもビビらず弱点を探すことができるのではないかと思います(そんな甘くねーよって言われそう)。
まとめ
- 新卒カードで入社した大企業を辞める
- 大企業では社内紛争や短絡的な人件費抑制に疲れる
- 大企業では年功序列による機会損失が大きい
- 新卒カードで一度大企業に入ってみるのはオススメ
2015年度お疲れ様でした。2016年度は飛躍の年になりそうです!
おしまい。