GPIFが5兆円もの損失を発表し話題となっています。ネット上では大切な年金を博打に使うなんて!など批判が相次いでいます。この批判も程度が様々なのですが、そこら辺を今回まとめてみました。
GPIFとは
年金積立金の管理・運用のしくみ | 年金積立金管理運用独立行政法人
日本語名は独立行政法人・年金積立金管理運用だそうです。その名の通り、私たちが積み立てている年金を管理している機関です。管理しているお金の総額は140兆円にものぼるそうです。
なぜ株を買うのか
私たちが積み立てている年金は、ただただ口座に貯金されているのではなく、GPIFによって国債や株式にされて管理されています。これには幾つか理由があります。
- インフレによって積み立てが無にならないようにする
- 積み立てた額以上の給付ができるようにする
- 管理費を賄う
などの理由があります。
1. インフレによって無にならないようにする
日本にいるとお金の価値は不変のように感じてしまいますが、基本的にそれは普通ではありません。多くの国ではインフレが進行中で、お金の価値は下がり続けています。日本だって明治時代は月収が2円だったとか教科書に書いてあるじゃないですか?それは明治時代がとてつもなく貧しかったわけではなくて、今より貨幣価値が高かっただけなんですね。2円で生活できるくらい円の価値が高かったわけです。
もし今後円の価値が下がるとするとどうなるでしょう?毎年年金を2万円払っていたとして、65歳から月に10万円の年金が貰えるとしましょう。今10万円あると6万円の家賃や2万円の光熱費は払えそうですね。しかし、インフレで円の価値が10分の1になったらどうしましょう?円の価値が10分の1になるということは、物の値段が全て10倍になるということです。つまり、さっきの家賃は60万円、光熱費は20万円になるわけです。こんな世界で年金を10万円貰っても生活できません。
このインフレから積み立てを守るためにGPIFは積立金を国債や株式で管理しています。仮に円の価値が10分の1になっても、国債や株式は価格が10倍になっているので、年金は月に10万円ではなく100万円給付できる計算になるのです。
2. 積み立てた額以上の給付ができる
年金の積立金を国債や株式で管理することはインフレ対策となります。こうなると、私たちは積み立てた額以上の給付を受けることにもなるんです。なぜなら月々10万円分しか積み立てていなかったものがインフレで月々100万円になるわけですからね。
もちろん運用が黒字になれば月々の給付はさらに増えます。赤字になると減りますが、インフレになっているとその影響は相殺されます。
3. 管理費を賄う
お金を管理するのにも費用がかかります。GPIFの職員の人件費などありますからね。民間の銀行に預けると、倒産したときに保障できませんし、140兆円もの額を民間で受け入れられるところはありません。このため、年金は年金専門の機関で保管管理する必要があるのです。そして、年金をGPIFに貯金するだけの場合、積み立てた年金から管理費が差し引かれてしまいます。それを防ぐために運用して管理費を賄うわけです。別にこれは普通のことで、銀行も同じことをしています。私たちが銀行に預けているお金で銀行は融資を行い、管理費を賄って更に利益もあげています。それどころか、預金者に利子までつけているんですね。本来なら管理費を払えと言われてもおかしくありません。利用したらお金が貰えるコインロッカーなんて存在しないですよね。
株を買うことの問題
ここまで株を買うことは大事と言ってきましたが、これには1つの大事な前提があります。それはインフレが維持されていること。インフレどころかデフレの場合は上記の理由は相殺どころか逆効果になるこれには1つの大事な前提があります。それはインフレが維持されていること。ものもあります。今の日本はデフレ脱却できず苦しんでいるので、そういう意味では株を買うことは自殺行為ともいえます。ただ、アベノミクスで不退転の決意でインフレに経済を戻すと言ってたので、インフレ前提の運用になっているわけですね。GPIFの損失を批判している人は、このことを分かって言ってる人と、分かっていなくて言っている人がいるので注意しましょう。批判の質が全く異なります。
おしまい。