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地下鉄や地下街は地震に対して安全な場所なのか?|南海トラフや首都直下地震への備え

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いつ来るか分からない首都直下地震。もし地震が起きた時に逃げるべきはビル内なのか、それとも地下なのか。今思えば、シンゴジラでは避難に遅れた市民は地下街や地下鉄へ避難が指示されていました。地下ってそんなに安全なんでしょうか?

 

地下は地震の揺れに強い

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まず、地下は地震の揺れに強いことが知られています。上図のように、建物は地震の揺れに対し、慣性力により逆方向の力がかかってしまいます。このため、大きく揺れたり、激しく左右に揺れると倒壊してしまうことがあります。一方で、地下は周辺の地盤と一緒に動くため、大きな力が働きにくくなっています。このため揺れによる構造物の損傷は地上の建物より少ない傾向があるのです。具体的には地下の構造物は地上の建物の半分から3分の1まで加わる力が減少するそうです。イメージとしては、建物の最上階より1階のほうが揺れが少ないのは分かりますよね。地下だと当然揺れの影響は少なくなるわけです。

 

地上の惨状は地下に影響を与えにくい

震災で揺れの次にやってくるのが火災です。関東大震災では多くの人が火災で亡くなったと聞きます。もし首都直下地震が発生した場合、都市全体が火災に見舞われるかもしれません。そんなときに地下はどうなるのでしょうか。

実は地上が大火災に見舞われていても地下は安全であることが多いようです。煙は上に向かいますし、地下は空気も限られていれば、燃えるものも少ないので、地下へ向けて延焼していくことはまずありません。このことは歴史でも証明されています。

www.excite.co.jp

太平洋戦争中の大阪大空襲にて、難波周辺は絨毯爆撃により町全体が火災に見舞われてしまったそうです。周りを火に囲まれた人々は地下鉄に逃げ込みますが、そこでは地下鉄が走ることができたそうです。運よく地下鉄に逃げ込むことができた人は、救援列車によって難波から梅田や天王寺に避難できたとのこと。地上が地獄と化しても地下は日常を保つことができるようです。

 

唯一の不安は水害

揺れにも火災にも強いなんて、地下は地震に対して最強じゃないか!そう思いたいのですが、1つだけ弱点があります。それが水害です。当然ですが、地上にある水は全て地下にやってきます。更に地下鉄や地下街は全部コンクリなどで固めているため、水に逃げ場はなく溜まる一方です。ただし、地震の水害といえば津波ですが、地下鉄や地下街は一部の大都市にしか存在せず、特に日本の地下鉄が津波被害に遭ったことは今まで一度もありません。

豪雨や洪水被害

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【東京】知っておくと助かる地下鉄の知識まとめ - NAVER まとめ

しかし、豪雨や洪水被害はあります。1993年の台風11号では丸ノ内線の赤坂見附駅が水没しています。水没した水面がホームの高さまで達しています。豪雨だけではこの程度ですが、河川の堤防決壊の場合は更に多くの水が流入することが考えられます。実際に東京メトロや都営地下鉄では津波による水没よりも荒川の堤防決壊による水没リスクが重視されているようです。

 

中央防災会議「大規模水害対策に関する専門調査会」(座長:秋草直之 富士通株式会社取締役相談役)では、大規模水害発生時の課題に関する検討の一環として、荒川堤防決壊時における地下鉄等の浸水想定について検討を進め、今般、その結果をとりまとめた。その結果、現況程度の止水対策を前提とした場合には、17路線、97駅、延長約147kmが浸水するケースや、堤防決壊後3時間余の短時間で大手町駅などの都心部の地下の駅が浸水するケースがあることが確認された。

内閣府:http://www.bousai.go.jp/fusuigai/pdf/090123_kisya.pdf

 

また、荒川氾濫というフィクションドキュメンタリーが制作・放送されたこともあります。Youtubeには2012年に公開されたそうです。

www.youtube.com

toyokeizai.net

とはいえ、河川氾濫は発生の予測が比較的容易です。氾濫水位に達した時点で何らかの対策を打つことはできるかと思います。が、津波の場合は河川氾濫よりエネルギーが高いだけでなく、場合によっては数分で襲ってくるものです。今後も永遠に津波が地下を襲わないことを願います。

 

今までの地下鉄の地震被害

先ほども書きましたが、地下鉄は一部の大都市にしかないため、地震に襲われたケースが少ないです。それでもゼロではありません。特に最も大きな地震に襲われたのが阪神淡路大震災の神戸市営地下鉄です。 しかし、過去最大級の地震に見舞われた神戸市営地下鉄も崩落のような大参事には至っていないそうです。

  • 神戸市内には、「さんちか」、「メトロこうべ」、「デュオこうべ」の3 つの地下街があり、三宮にある「さんちか」では、震度7以上の分布域に位置し、とくに大きな地震動を受けた。
  • しかしながら、各地下街とも、地震による構造物の被害は、部分的なひび割れが生じた程度の軽微な被害であり、この地震以降に整備された阪神・淡路大震災クラスの地震動に対応した現在の耐震設計に準じた耐震性能の照査までは行っていないにも関わらず、構造物全体が崩壊に至るような大きな被害は発生していない。

国土交通省 地下街等の被災状況等について
http://www.mlit.go.jp/common/001021689.pdf

東日本大震災において震度6から5強に見舞われた東京メトロ、都営地下鉄、横浜市営地下鉄においても大きな被害は発生しませんでした。先にも述べた通り、やはり地下は揺れに強いようです。また、2005年に発生した福岡西方沖地震でも福岡市営地下鉄が最大震度6弱に見舞われましたが、特に大きな被害はありませんでした。

 

とりあえず結論としては地下鉄は安全。津波を含む水害については今後も対策が必要なのではないでしょうか。

 

  

おしまい。