絶対的貧困と相対的貧困について予想以上の反響があったので、相対的貧困について更に調べてみました。書いておきながら、相対的貧困は本当に生活が苦しいのか?どれくらいの所得になるのか?が分からなかったので調べました。
相対的貧困の所得ライン
等価可処分所得の中央値の半分が相対的貧困のラインなのですが、可処分所得でもイメージが難しいのに、等価可処分所得は全然イメージできません。正確性には欠けますが、これを額面の世帯所得への変換を試みます。
まずは等価可処分所得の中央値と相対的貧困線を調べます。資料によると、それぞれ以下の通りです。参考:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/03.pdf
- 等価可処分所得の中央値: 244万円
- 貧困線: 122万円
続いて国内の世帯収入の統計データを調べます。
- 世帯収入の平均値: 537万円
- 世帯収入の中央値: 432万円
世帯収入の中央値から等価可処分所得は導かれています。世帯人数によって変わるので誤差がありますが、単純に等価可処分所得の中央値は世帯収入の中央値の54.8%となっています。この比率から世帯収入の貧困線を逆算すると下記の通りです。
- 世帯収入の貧困線 = 122 / 0.548 = 216万円
世帯収入が216万円以下の世帯が相対的貧困層である。それなりに近い値が計算できでいるのではないかと思います。まあ、結局世帯収入の半分なんですけどね。
しかし、もう1つ大事な数字があります。世帯人数です。世帯年収が216万円でも単身世帯では相対的貧困層に該当しません。単身世帯では等価可処分所得が122万円未満にならないからです。よって、誤差を含みますが、世帯収入の相対的貧困線は下記のように推測できます。
- 世帯収入が額面で216万円以下
- 世帯人数が2人以上
年収216万円のモデルケースを推測
では推測した相対的貧困線上の世帯のモデルを検証してみましょう。年収216万円は月収18万円に相当します。賞与なしです。非正規かパートの掛け持ちが想像できます。月収18万円から国保や年金、所得税を引いてください。ざっくりと5万円です。つまり手取りは13万円となります。子供のいない夫婦や、片親と子供の2人で月の手取りが13万円。なかなか厳しい生活です。ここから家賃や光熱費を払わなければなりません。家賃は手取り収入の3割までに抑えろと言われていますが、手取りが13万円の場合、家賃は3万9千円以下にしなければなりません。二人暮らしで家賃3万9千円は首都圏だとなかなか厳しいですね。地方で郊外や田舎であれば良い物件もありそうですが、その場合は仕事も減ります。ここまでをまとめてみると、
- 月収18万円で手取りは13万円
- 家賃は3万9千円以下
- 残る生活費は9万1千円
食費を1人1日1000円にしても2人で6万円。残りは3万1千円しかありません。光熱費が1万円かかると残りは2万1千円。携帯代が2人で1万円も使うと、残りは1万1千円になります。貯金どころか、ちょっと油断したり、モノが壊れたり病気になるだけで赤字です。それでも生活できているじゃないか、貧困とは呼ぶほど酷いものではないと思われるかもしれませんが、残り1~2万しかない状態では子供には苦しい思いをさせてしまうかと思います。
- 塾に通えない
- 制服が買えない
- 給食費が払えない
- 教科書が買えない
- 修学旅行の積立金が払えない
- 卒業アルバムが買えない
残り1~2万では上記のようなことは簡単に起こってしまうかと思います。それに、年収216万円というのは相対的貧困層で最も収入が高いケースです。実際に相対的貧困層に入る世帯は、確実にこの計算より生活水準が下回るのです。やはり、相対的貧困層は貧困と呼べないというのは言い過ぎではないか?と考えます。
先日のNHKの炎上事件の女子高生は相対的貧困層なのか?
となると、話は最初に戻るのですが、先のNHKの炎上事件の女子高生は相対的貧困層だったのでしょうか?しかしそれは世帯収入が分からないので、正解は分かりません。とはいえ、母子家庭であれば半数が世帯収入が216万円を下回ります。相対的貧困層に該当する可能性は十分あります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/03.pdf
ただし、この収入では指摘されている様々なモノは買えないようにも思えます。結局のところ、相対的貧困層なのかどうかは分からないのです。世帯収入が公開されれば計算できますが、そんな個人情報が公開されるわけもありません。
というわけで、相対的貧困線は先進国における貧困層として定義して良い水準ではないかと考えます。相対的貧困は甘えだとか、共産主義者の都合で作り出した指数だとかいう人もいますが、これはOECDが先進国の貧困度を測るのに使う指数であるため、無視できるものではないことは明らかです。今回の女子高生が相対的貧困層に該当するか否かに関わらず、相対的貧困を否定するのは間違っているわけです。そもそも女子高生のTwitterアカウントを晒し、甘えるなと大バッシングを浴びせる行為が狂気じみていると思うのですが。みんな高校生のときって努力家で素晴らしく立派な人間だったのでしょうか?僕は酷かったですけどね笑。
おしまい