北朝鮮がICBMの開発を進めており遂に米国全土を射程圏内とする勢いです。2017年11月30日未明には高度4500キロメートルにまで達したようです。今年はロフテッド軌道で日本海にミサイルを落とす実験を幾度となく行っている北朝鮮ではありますが、飛距離が伸び始めたこともあり直近2回は日本列島を超えて太平洋上に落としていました。しかし今回再び秋田県沖250キロメートルの日本海上に落としました。飛距離が伸びたにも関わらずです。今回は日本海に落とすことがどれだけ難しいことなのかを計算してみました。
ミサイルの発射角度を求める
まずは今回のミサイルの起動を図にまとめてみましょう。
とまあ、こんな感じですね。
一方で水平方向には1000キロしか飛んでいないわけです。ではこの経路を取るにはミサイルを何度傾斜させて飛ばせば良いのでしょうか?当たり前ですが、ミサイルを90度で発射すると真上ですから自分に落ちてきます。かといって傾きすぎると1000kmを遥かにこえて日本やアメリカに飛んで行ってしまいます。
角度は三角関数で求められます。高度は4500キロで底辺は水平移動の半分なので500キロです。このため角度θは次の式となりますね。
tanθ = 4500 / 500
よって今回のミサイルの傾斜は83.66度を維持して飛び続けねばならないことが分かりました。では水平移動が1キロ異なる場合はどうでしょうか。下記のようになります。
- tanθ = 4500 / 499 のとき 83.67度
- tanθ = 4500 / 501 のとき 83.65度
ということで、0.01度ズレると飛距離が1キロ変わることが分かりました(四捨五入の誤差はありますが)。
なぜ日本海に落とすのが難しいのか?
今回は秋田県沖250キロの地点にミサイルが着弾したと報道されています。さきほどの計算で0.01度ズレると1キロズレることが分かりました。では、250キロズレると日本本土に着弾するわけです。何度ズレると日本本土に着弾する可能性が出てくるでしょうか?
250 x 0.01 = 2.5
2.5度です。平均して83.66度で飛んでいたものが81.16度になってしまうと秋田県に着弾する可能性が出てきます。天候の影響も受けながら、更に音速を超える速度で誤差2.5度以内で飛び続けなければならないのです。日本本土に着弾すれば米国は軍事攻撃を行う大義名分ができてしまうわけですから、それでも日本海に落としたというのは技術的にかなり成熟していることが予想できます。
僕みたいな素人でもこんな計算してしまうのですから、米軍や自衛隊は軌道をはじめとした様々なデータから北朝鮮の開発状況や脅威を緻密に計算しているのでしょうね。また、どこに落とすかで外交的な駆け引きも実際に起こっているんだろうなということが想像できますねえ。
まとめ
- 今回のミサイルの発射角度は83.66度
- 0.01度ズレると1キロズレる
- 今回は2.5度ズレると秋田県に着弾していた可能性がある
- 太平洋に落とすほうが楽なのにそうしなかったのは技術向上が予想される