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タトゥーや刺青(入れ墨)の入店拒否は差別で違法にならないのか?

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定期的に芸能人や訪日客のタトゥーや刺青が話題になります。芸能人は反社会的だとテレビなど公共の電波で放送して良いのか、訪日客は海外で一般的なタトゥーをしているだけで温泉や浴場に入れないのかなど問題になります。そこで今回はタトゥーや刺青を排除することは差別で違法にならないのか調べてみました。

日本のタトゥーや刺青の歴史

日本の刺青文化が最高潮に達したのは江戸時代

日本も古くから刺青は存在していたそうですが、背中全面に絵が描かれたような、いわゆる一般的にイメージされる入れ墨ができたのは江戸時代だそうです。江戸時代に一般大衆で流行したようですが、一方で武士階級では入れ墨は流行らなかったそうです。

明治時代になると刺青が規制される

江戸時代が終わって明治時代になると、明治政府は刺青が野蛮だとして警察犯処罰令によって刺青は違法となりました。刺青は終戦後の1948年に軽犯罪法ができるまで違法行為でした。

戦後は暴力団員が刺青で威勢を張り始める

戦後は刺青は違法ではなくなりますが、今のように一般的になることはなく暴力団員が威勢を張るために使われるケースが目立つようになりました。この頃から温泉や浴場、プールなどで刺青の入場禁止が始まったようです。日本で刺青に対する社会的イメージが一番悪化したのはこの時期かもしれません。

現在の刺青の規制

刺青は戦後にできた軽犯罪法により違法ではなくなりましたが、刺青を施術するには医師免許が必要とされています。ただ、医師免許を取るには医学部を卒業する必要があるのでハードルは高いです。そのハードルを越えてまで合法的な彫師になる人はどのくらいいるのでしょうかね。

タトゥーや刺青の拒否は違法にならないのか?

タトゥーや刺青には一定の処置は認められるが…

例えば刺青があると自衛官にはなれません。少なくとも2016年度の自衛官(男子)募集要項では刺青は身体検査で不合格になると明示されています。また、2012年には当時の橋下徹大阪市長が市職員に刺青のアンケートを取り、刺青の有無によって配置転換、回答拒否した職員には訓告処分に至っています。この訓告処分は反発もあって裁判にもなったようですが、最高裁判所は合法という判断を下したそうです。この裁判では裁判所は刺青について下記の判断を下しています。

  • 刺青をする理由はさまざまで、刺青の有無は人種や犯罪歴と同列ではなく、差別情報に当たらない
  • 刺青のある職員を市民に接する機会の少ない職務に配置転換する目的も正当

刺青を理由に差別はしてはいけないが、刺青を市民から遠ざける行為に問題はないということのようです。もしかすると、自衛官の身体検査項目に刺青があるのは法的に微妙なラインなのかもしれません。

タトゥーや刺青を理由に入店拒否は法律で認められているのか?

入浴施設や飲食店など刺青禁止としているお店はありますが、これは問題ないのでしょうか?まず入店拒否ですが、入店拒否そのものに関する法律はありません。合理的な理由があれば入店拒否は違法ではないそうです。一般的に違法となるのは下記のような事例です。

  • LGBTである
  • 車椅子に乗っている

タトゥーや刺青を理由とした入店拒否はまだ合理的なのかが焦点となるようです。

タトゥーや刺青の排除は差別にならないのか?

暴力団との関連性を理由とするのは厳しいかもしれない

タトゥーや刺青を理由とした入店拒否が合理的かどうかは暴力団との関連性が焦点になると思います。昭和の時代は刺青をしている人の暴力団員の確率は高かったのかもしれません。「暴力団員の入店お断り」と書くと嫌がらせや報復を受ける可能性があるので、「タトゥーや刺青は他のお客さまが暴力団員かと疑ってしまいますので」と間接的に暴力団員お断りとしていたわけです。この理由であれば合理的で違法にはならなさそうです。しかし、今やタトゥーや刺青と暴力団員の関連性ってどれほど高いものなのでしょうか?先の裁判にも最高裁判所は「刺青をする理由はさまざま」と述べていることから、この理由は合理的ではなくなってきている可能性があります。

タトゥーや刺青がNGという条例を作ってしまうケースも

一方でタトゥーや刺青があると景観が損なわれるので入場禁止とする条例を作ってしまったケースもあります。ただ、違法か合法かという話と差別かそうでないかは違う話なので注意が必要です。合法である法律や条例が存在することは差別ではないという根拠にはなりません。

まとめ

  • タトゥーや刺青を排除を全般的に認める法律や条例はない
  • 暴力団の排除をタトゥーや刺青の排除で間接的に代用するのは時代遅れになっている可能性がある
  • タトゥーや刺青の入店拒否は合理性が焦点なので、時代や世の中の考えが変われば法律改正がなくても違法になる可能性がある

参考

暴力団排除条例 - Wikipedia
入れ墨 - Wikipedia
須磨海岸を守り育てる条例
http://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/pdf/y/28jikoudany.pdf
 日本の入れ墨、その歴史 | nippon.com
 「2度とくるな!」と飲食店から入店拒否された…違法ではない? - シェアしたくなる法律相談所
 入れ墨訴訟:調査「適法」確定…大阪市職員の上告棄却 - 毎日新聞
警察犯処罰令 - Wikipedia