何かと話題となりやすい生活保護問題。不正受給やパチンコなどに視線が向けられがちですが、本当にそれは問題の本質なのでしょうか?統計データを調べてみると、ある重要な問題の根源を知ることになりました。
生活保護とは
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
健康で文化的な最低限度の生活を保障するため、生活保護を受給していると医療費が無料となります。また、葬式の費用も生活保護が負担してくれるようです。単に食費や家賃が賄えるだけではないのですね。現在、この生活保護の年間総額は3兆5千億円に達しています。
生活保護受給者数の推移
生活保護受給者は1990年代に戦後最低を記録していました。しかし、1990年代後半から上昇に転じ、リーマンショック後にその勢いが加速しています。リーマンショック前の好景気においても上昇を止めることはできていません。
日本の犯罪件数が増えてきたのは人口が増えてきたからという話を先日記事にしました。この生活保護も人口が増えたから受給者が増えただけかもしれません。そこで、千人当たりの生活保護受給者数をグラフにしてみました。先ほどの受給者数と動きが変わりません。割合は戦後最悪ではなさそうですが、やはり1990年代後半からの上昇傾向は強いトレンドのようです。
なぜ生活保護受給者が増えているのか?
景気の悪化や不正受給者の増加が原因だと思っていましたが、主な原因は高齢化のようです。これは意外に感じる方が多いのではないでしょうか?確かに1990年代後半からの受給者数は年代に関わらず増加傾向にあるのですが、70歳以上の受給者数の伸びが桁違いに多いです。高齢者は年金が十分に貰えないと即生活保護に転落するので、高齢化が進めば生活保護受給者も増えてしまうようです。
千人当たりの生活保護受給者数も年齢が上がるごとに増えています。さらに、1990年代後半からの上昇幅を見てみると、年齢が高いほど大きく増えていることが分かります。ただし、上昇率で考えると1995年から2011年において、70歳以上は1.6倍、20代は3.6倍となっています。このため、20代のほうが伸びが大きいとも言えます。
以上のグラフから分かったことは以下の2点です。
- 生活保護受給者が増えているのは高齢者が増えていることが原因
- 若者の生活保護受給率が大幅に増加しているが、少子化で絶対数が減っているので、生活保護受給者全体が増えている原因とはなっていない
生活保護の予算高騰の原因は医療費
生活保護の予算高騰の原因は医療扶助費にあります。もはや生活保護費の半分を医療扶助が占めます。高齢者の受給者が急増しているわけですから、この医療扶助も急増することになります。その結果が年間総額3兆5千億円です。実際に高齢者世帯の9割以上が医療扶助を受けているそうです。
高齢化により健康保険の国庫負担増が問題となっていますが、生活保護も医療費無料という制度があるために、同様の負のスパイラルに突入しています。このため、国は医療費の国庫負担をいかに軽減するかを考えているようです。しかし、これはなかなか解決策を導き出すのは難しそうですね。
まとめ
- 生活保護受給者が増えている原因は高齢化である
- 生活保護費が増えている原因は高齢化による医療費の増加である
- 不正受給やパチンコの取り締まり強化はコストがかかるばかりで、問題を根本的に解決できるわけではない(費用対効果を考えるべき)
- 若者の生活保護受給率も大きく増えているが、少子化で絶対数が減っているので生活保護全体への影響は小さい
参考:「生活保護」に関する公的統計データ一覧|国立社会保障・人口問題研究所
参考:http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000062671.pdf
おしまい。