30歳未満における世帯年収300万円未満の割合が20年で倍増したというニュースが2015年に話題となりました。これに対して、「若者に職がない」「老害が国を滅ぼす」などのコメントが殺到しています。もちろん、若者に対する現在の課題はありますが、この記事はそんなに単純な話ではないようです。
若年層の世帯年収激減の数字のトラップ
比較しているのが若年層の世帯年収
倍増したのは世帯年収が300万円未満の割合です。ではこの世帯年収とはどういう数字なのでしょうか?
上記のように、世帯全体の収入となります。つまり、年収が300万円未満の人が倍増したわけではないのです、あくまで年収の合計が300万円未満の世帯が倍増したのです。これって単純に若者の所得が減っているという話ではないのが分かるでしょうか?
急速に上昇していく未婚率
世帯年収300万円未満が倍増した背景には、未婚率の急速な上昇があります。内閣府が公表している下記の資料を見てみてください。
第1-特-20図 生涯未婚率の推移(男女別) | 内閣府男女共同参画局
世帯年収300万円未満が倍増したのは、1994年から2009年にかけての期間です。その間の生涯未婚率の推移を見てみると、女性は5%から10%、男性は5%から22%へと大幅に増加しています。このことから、若年層に占める1人世帯の割合が大幅に増加していることが推測できます。世帯年収は世帯全員の年収であるはずなのに、現在の若年層は世帯年収=個人年収となってきているのです。
若年層の1人当たりの年収の変化
若年層の1人当たりの年収は激減はしていない
そもそもサラリーマン全体の年収が20年間減少傾向なわけです。当然若者の年収も程度の差はありますが、同様に下がってきています。しかし、データを見ても個人の年収300万円未満が倍増するほど急落はしていません。
やはり、世帯年収300万円未満が倍増した原因は未婚率の上昇によるものが大きいのではないでしょうか?